[p.0231]
駿台雑話

灯台もと暗し
宵の間過る程こゝにありて、御物語承らんとて、各坐につきけり、しばらくいりて燭もて至りぬるに、翁ふとおもひよりしまゝ、燭台おさして、世俗の諺に、灯台もと暗しといふは、いかやうの事にたとへていふにやあらん、おの〳〵いふて見給へとあれば、座客の中ひとりいひけるは、世に何事にてもあれ、外にはかくれなき事お、其もとにてきけば、却て分明ならぬやうの事にかく申ならし候、〈○下略〉