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骨董集
上編下後
行灯再考
行灯はもと提ありく為に制れる物にて、家内にすえおくは後の事也といふ証お、又見いでゝしるす、山伏道葬送行列次第〈杏花園蔵本〉といふ古き書に、〈上略〉次導師先達、〈持檜杖〉次馬、次捧物、次左右行灯、次棺雲々、無縁双氏〈巻四〉尊宿荼毘之次第といへる条に、一番幡四流〈左右〉僧持、二番行灯四箇〈左右〉行者持雲雲、〈これら室町家のころの葬式なるべし、鎌倉年中行事の行列に、続松一丁行灯ひとつもたせべしとあるお、これらに合せ考ふれは、行灯は今のちやうちんのごとく、提ありきしにうたがひなし、〉累解脱物語〈下巻〉に、いつのほどより集りけん、てん手に行灯ともしつれ、村中の者ども、稲麻竹葦と並居たるが雲々、〈とあり、此物がたりは、元禄三年の印本也、そのころまでも田舎にては、もはら行灯おさげありきしなるべし、先板の巻に引る嵐雪がしゆもく町の発句と同時也、合せ考ふべし、〉