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宝蔵

あむど
灯は夜お日につぐそなへにして、諸人このかげによらずといふ事なし、しかあれど間毎に風なきにしもあらざれば、そのまたゝくがうるさゝに、まはりおかこひて紙おもてこれおよそひて、もて行く便ともせり、彼佐野の何がし常世が、世に出しゆふべにも、合せて三けの庄相違あらざる自筆の状、行灯にとりそへ給はりしなどきけるは、長牢人の心の闇おもてらせとにや、此ものむかしは四角なるばかり有けらし、ふるき女のわらはの、なぞ〳〵にも四方しらかべ中ちよろちようなどこそ雲つれ、三四五十年以前、天が下の数寄人の御作意に、丸あんどゝいふものこのみ給てより、今はまろきも世にひろまりつ、
物ずきも新月や丸あむど
炎天除幄尚如蒸 眠気難堪忽枕肱 連夜可期見黄巻 凉風当腠(はだへ)不当灯