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蜘蛛の糸巻追加
祭礼万度(○○)
天明前後の祭礼には、万度と唱へて、七八寸の角柱の、たけ九尺なるお真とし、上には横板ありて、是にさま〴〵の飾り物おなす、正面には、扇の形の額おうち、山王と大書し、町名お出だし、或は氏子中など書くもあり、是お手だめしに持ちありく、其力量にほこるお侠とす、此小なるお小万度(○○○)とて、子供らに持たしむ、祭礼近なる夜中、角物に土俵お結附け、かりに万度としたるお、かの侠客ども、万度の稽古とて持ちありく、各町の手提灯、おほかたは裸体にて、鉢巻緋ぢりめんのふんどし、見る者群集おなして随ひありく、子供等も又是に効ふ、天明中の風俗なり、扠天明五六年の比と覚ゆ、京橋弓町より藤棚の大万度(○○○)出でゝ、町の木戸口に障りて、横になして通る程の物なり、