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万金産業袋

挑灯類〈此条には箱と丸とのてうちんの一通並にはりの仕やう以図注之〉
箱でうちん、図なし、壱尺弐寸、壱ばん壱尺壱寸五分、あいの物、壱尺壱寸、弐ばん壱尺五分、三番九寸五分、八寸飛脚でうちん、小でうちん、七寸、六寸、五寸、四寸、どうらん、かなでうちん、此類にいたりては、大きさ定まらず、あるひは角形なるもあり、紙は美濃紙にてはる也、
丸でうちん、大きさ極なし、どう、ほうづき、丸、たま子、あこだ、つぼなり、馬でうちん、〈鯨の弓おかくる〉からかさでうちん、四角、ほたる、
右の類このみにしたがふ、大きさ古代よりの寸法に定法もなし、箱でうちんには、釣(つる)、金物、棒、同かな物いる、丸でうちんは鍱にて割底にもする有、扠張おろしと、油ひき二品あり、但てうちんには、胡粉にて紋所お書て、そのうへに油おひく事あり、火うつりてよき物也但油不引にもよし、此竹の数六本
てうちんの大小
かたも又大小お
もちゆ
如此きざ
あり
箱でうちんの張がた也、丸き板に六つ穴おぬきて、図のごとく天地にし、此穴へ竹の弓おこしらへはめて、外へ少しそらし、其上へほねおむらなくならべて、麻のより糸お、大は四所、小は三所ほどづゝ、上下まつすぐにかけてつなぎとめ、扠紙おはる事也、よく干て後、右の竹の、反(そり)おはづし、内のかたおぬく也、
丸でうちんの張がた也、図の如く中の板せつかいの如く成お六枚こしらへ、上下の鍔へはめて、かたの丸(まるみ)の外にほねのきざお付置、是へほねおならべ、右の麻糸おかけてはる也、是もとくと糊かはきて、内のかたおはづす、
右張あげて、箱でうちんは上下の箱の内に糸のかゞりあり、是へゆひつくる、雨天の時のけふり出しのためなどゝて、上下あるひはうへ計お麻のより糸にて、幅壱寸か壱寸あまりの網おすきて、その糸の末おすぐに箱かゞりへゆひ付るも有、又内に鎖お入る事、これ全く用心のためとぞ、又紙お四角にたゝみて、箱でうちんのごとくし、骨なしに上下に薄板お用ひてこしらゆる術、万世秘事枕といふ書にあり、是らは作意の秘曲なれ、扠京祇園のみこし洗、江戸浅草の宝前でうちんは、三尺四尺あるひは五尺七尺あるも有、加様の類は、骨も常の丸ぢやうちんの骨にあらず、糸も麻のより糸、紙も大直し、国栖お用ゆ、朱紋墨紋あぶら引にして、二丁ならべのらうそく立、おびたゞしく大忿なる仕かけあり、然どもみな畢竟丸でうちんなれば、製作に別義なし、長さ壱丈のてうちんに、もじ奉懸御宝前等の書付おせば、是には少し口伝あり、譬ば五文字の内、上の一字壱尺あらば、その次の字より段々とちいさく、下の前の字に至りては、漸七寸位に書べし、左のごとく書ては、高き所へ引あげて、下よりのかつこうよく見ゆる物也、此心得てうちんのみに限るべからず、一切高き所へ上る物の書付は、此心得専要なり、よく工夫有べきか、