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日本新永代蔵

千貫目持の印判おして深き心
下男燭台挑灯の掃除して、流れつき亢る蠟お、塵塚にすつるお、市助是お私に下されませといふ、大所につかはるゝ下男、いらばとつていきなと、頤にてゆるしけるお、市助ながれお集め、奉書の反古お四五枚もらひ、是にやう〳〵と包みあまるおとかくして、一礼いひて大津へもどりがけに、京極の蠟燭屋に立よつて、是お売らんといふに、元来上々生蠟のながれなれば、三百七十文につけるお、色々としいて四百三十五文に売、蠟おわたし、反古は入なりととつて帰り、〈○下略〉