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橘庵漫筆

世俗蠟燭の尻お吹く事つねなりしお、年頃不審かりしに、予〈○田宮仲宣〉游歷中、田家に居お卜する頃、野狐甚多く、夜行唯提灯のらうそくお取らるゝ事、数度有て困れり、或人教て曰、らうそくの尻お吹くべしと、扠其後は試にらうそくの尻お吹くに、再び野狐に取らるゝうれひなし、夫野狐は人の息のかゝりたる物お喰はず、人の食ひ余りの物お食する事なし、故に斯のごとし、夜行蠟燭の尻お吹がよろし、