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太平記
三十五
北野通夜物語事附青砥左衛門事
或時此青砥左衛門、夜に入て出仕しけるに、いつも燧袋に入て持たる銭お、十文取はづして、滑河へぞ落し入たりけるお、少事の物なれば、よしさてもあれかしとてこそ、行過べかりしが、以外に周章て、其辺の町屋へ、人お走らかし、銭五十文お以て、続松お十把買て、則是お燃して遂に十文の銭おぞ求得たりける、