[p.0283]
源氏物語
二十七/策火
おまへのかゞり火すこしきえがたなるお、御ともなる右近のたいふおめして、ともしつけさせ給、いと凉しげなるやり水のほとりに気色ことにひろごりたる、まゆみの木のしたに、打まつおどろ〳〵しからぬほどにおきて、さししぞきてともしたれば、御前のかたはいとすゞしくおかしきほどなるひかりに、女の御さまみるかひありて、〈○中略〉かへりうく覚しやすらふ、たえず人さぶらひてともしつけよ、夏の月なきほどは、にはのひかりなきいと物むつかしく、おぼつかなしやとのたまふ、