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雲根志
前編二
火打石
火打石は名産多し、国々諸山或は大河等にあり、色形一ならず、山城国鞍馬にあるは色青し、美濃国養老滝の産同じ、此二品甚だよし、伊賀国種生の庄に膏薬石あり色甚だ黒し、兼好法師が住居せし時に、静弁が筑紫へまかりしに、火うちお贈ると書る是也、阿波国より出るはこれに次、筑後火川、近江狼川は下品也、水晶石英の類も、よく火お出せども、石性やはらかにして、永く用ひがたし、加賀或は常陸の水戸、奥州津軽等の馬脳大によし、駿河の火打坂にも上品あり、共に本草の玉火石の類なるべし、