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国産考

摂州池田の在にてはくぬぎの木お何本とて嫁すに持参に遣すよし、此くぬぎの木といへるは、野山に生立て、元の廻り一とかゝへ、又一とかゝへ半もありて、壱丈ほどの上より、数百本枝出たり、此枝といへるは、元株より出たるは、廻り五寸より壱尺位になりたるお、冬に伐はらひ炭に焼出すに、池田炭とて母間茶の湯に用ふる也、是は伐て二三年も立ぬれば、又元のごとく七八寸、あるひは五寸廻りぐらいなる枝になる也、かくのごとくして数年伐とる事なれば、元株は右雲ごとく二囲にもなり居る也、是も池田炭とて一種の名産也、猶右いふ古株より出たる枝にて焼たる炭なれば、程よくかるくして火もち宜し、三年目づヽ間おき伐ても、壱株より七八十俵の炭お焼出せば、壱株銀弐匁づヽと見ても、八十俵にては百六十目也、半分雑用と見ても八九十目の利分也、十株あれば八九百目也、是お三年目に伐取と見れば、一け年凡三百目づヽの得分にあたるなり、