[p.0360]
古事記伝
二十七
上代には、夜の中の明りには、多く燎火お用ひたり、後世にもいはゆる衛士の燃火、〈○註略〉神社の庭火、〈火炬屋と雲もあり〉篝火など、皆明りのためにして、古の為(しわざ)の遺れるなり、〈上代には屋内にても、燎火お用ひしなり、故かの甕栗の宮清寧の段なる、焼火小子も居竃傍とあり、竃とは其燎火おする炉の如き物お雲なり、飯など炊く尋常の竃には非す、然るお書紀には、此なるおも、かの焼火小子おも共に、秉燭者(ひともし)と書れたるは、強に漢(から)めかさむために、改められたる文にして、実に違へり、秉燭者てては、居竃傍と雲こと由なし、〉