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有徳院殿御実紀附錄

これよりさき郭内お往来するものゝ従者は、いかなる暑日といへども、笠きる事ならざりしかば、みな炎熱にたへかねて、はなはだくるしみあへり、かねて此事しろしめしければ、御位〈○徳川吉宗〉につかせ玉ふより、たゞちに従者の笠著る事おゆるさせ玉ひ、下馬所の外は、はゞかりなく用ひしめられしかば、奴僕のたぐひまでも、ひろき御恵おかしこみ、思はざるものなし、