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完天見聞記
昔は竹の子笠希にして、貴賤ともすげ笠おのみ用ひしに、文化の頃より、あじろ笠、竹の子笠お用ゆ、はじめは価もさまで貴からざりしに、次第に巧お尽してより、駿河細工の如き竹がさ、又は藤笠流行して、価百匹弐百匹にも及とぞ、すげの笠は、価三四匁にて、日おおほふに強く、かぶりて軽し、夫お今の竹笠に、百匹余お費すは、あまりなること也、