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昔昔物語
天和貞享の比、編笠次第に止、菅笠に成、御旗本中あみ笠の時分は、菅笠は、陪臣かぶり、御旗本菅笠の時は、編笠陪臣かぶる、元禄の比より押なべて菅笠に成し、下々は酷暑にもかぶる事なし、〈○中略〉
一両年以来、瀬川風とやら雲て、瀬川菊之丞と雲堺町の役者、女方の役者の真似とて、帯お立むすびにして、菅笠は、いたゞきの笠あてお、甚だ高くして、笠のふち頂より上へ上るやうにしてかぶる、大身の奥方、並供女、何も一様に仕立ありく衆、余程見ゆる、歷々衆が、河原者の真似するゆへ、小身末々まで、夫お学ぶなり、菅は水辺に生ずる故、宜然と日お不通、夏の笠は菅より能はなし、