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紫の一本
上/山
待乳山、〈○中略〉此山の風景言語に及びがたし、彼土手通ひする二挺立の船は、浅草川より新鳥越の橋へ漕入る、塩のなき時は橋より手前からおりて、山の麓お歩行にて行く、山の茶屋から知る人の見ることもやとて、熊谷笠おふせてかぶり、〈○下略〉