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蒹葭堂雑錄

南都東大寺八幡宮の神庫に納むる所の綾藺笠(あやいかさ)といへるあり、是はいにしへ天平勝宝二年より天文八年の頃まで転轄会といへる祭礼行われし時、渡御の節に用ひし物とぞ、其形最古雅にして藺お以て作り、麦藁にて上お装ひ、紅白の絹、紅紫の革等お以て飾り、裏は藍染の布おはり、紐も同じき布お用ひ、枕お付ず、是は烏帽子などの上にも著たるものなる故とぞ、〈○下略〉