[p.0405]
骨董集
上編下後
こゝにむしたれたるはざまよりや見えけんとあるは、虫のたれぎぬお著たるあひだより顔のすこし見えたるにて、それと人に見つけられたる也、これは小大進が、くま野まいりの旅よそひのさまおいへるなりけり、これらによりて考ふれば、虫のたれぎぬは、もと虫おさけん料なれど、おほくは旅の具にもちひ、風塵おさけ、寒気おふせぎ、又は面おかくす料にもせしなるべし、