[p.0408]
北条五代記

福島伊賀守河鱸お捕手柄の事
一年小田原久野の入に神まつりあり、諸侍見物せり、いがの守も是お見物せんと、牛の角にきんはくおおし、あかねの大ふさ鞦、あかねのはづなお付、おのれは草刈の体にて、腰にかまおさし、牛に乗、うしろむきて尺八おふき、女にくれないのそめかたびら、さきのとがりたるきゝやう笠おきせて、牛おひかせて、力者一人に長刀おかつがせあとにつれ、祭見物せしお、皆人けうがるふるまひとて、時に至て笑しか共、惡難おいふ者なし、