[p.0436]
松の落葉


かさのしなくさ〴〵あり、よき人のは、きぬがさ、おほがさになん、〈○中略〉おほがさのこと、すぎにし文化八年のう月に、京にまいりおりしかば、かもの祭見にゆきしに、勅使、菅のおほがさおもたせられき、ことしよりはじまれるなりとぞ、みやこ人いひける、そは久しくすたれたりしお、おこしたまへるにぞありける、西宮記十一の巻に、菅簦、公卿及祭使御禊前駆持之、〈白鳳制雲、三品已上聴菅簦、〉とあるによりて、ものしたまへるにこそ、菅にてはつくりたれど、きぬがさにつぎては、これもいとやんごとなきかさなりかし、しもざまにては、むかしも今も、なべてちひさき菅笠おぞきる、