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万金産業袋
一/器財
傘細工
傘〈○図略〉のさし渡〈し〉片々弐尺壱寸五ぶづヽ、骨竹五拾本、是お五十間といふ、骨竹六拾本、これお六拾間といふ、但〈し〉大坂傘は、五拾間といふに、ほね五拾弐本、あるひは五十四本あり、これ六間張といふ事有ゆへ也、紙は古来より森下おつかふと人みないへども、今は国栖紙のみにして、森下はかつてつかはず、故は国栖は森したより紙大きにして、六十枚一帖なり、森下は四十八枚一帖にて、紙は天地ともよほど小場也、しかもねだんは、くずよりはまたむつかしき方なれば、出入のちがひ、されば森下とくずとの紙のちがひにて、つよきよはきのわかちもある事かといふに、いさゝかもつてその相違なし、さるによつて世間一統、みなくず紙お用ゆる事なり、糊はわらびの粉のしぶ合せ、油は荏お二へんづゝ引〈く〉、天井ばかり青お紅葉といひ、ぐるりの青きお軒青(のきあお)といふ、〈俗に蛇の目〉紋じるし等は、油おひかぬさきにかゝすべし、猶油お引て書ても同じ事なれども、ひかぬさきよろし、〈○中略〉
糊の焼(たき)やう、上わらびの粉壱升に、水弐升いれて煮る也、よく摺木にてかきまはし、かげんよくにえたる時すり鉢へあけ、澀すこしづゝ見計ひにいれ、すり木にてねる、ずいぶんねるほどよろし、