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有徳院殿御実紀附錄
十三
王子村に御放鷹ありし時、飛鳥山のほとりにて、俄に春雨降出ければ、兼てうつくしみ玉へる宣といへる馬にめされ、片手綱にて、御右の手に長柄の傘おもたせ玉ひしが、ひとの手傘さしたるよりも、かろ〴〵と見え玉ひぬ、後に風つよく吹出し、雨も降しきりけれど、御傘いさゝかかたぶかず、御衣おもぬらさせ玉はざりしかば、見る人その御力量のほどお感じける、