守貞漫稿

三十/傘履

京島原、江戸吉原、大坂新町等、官許の傾城町、〈○中略〉上娼は長柄傘お用ふ、大さ前の爪折の如く、白と藍紙との蛇の目張也、京坂晴雨用之、江戸雨中のみ用之、蓋日傘には油なし、雨傘には荏油おひく也、妓院の家絞お大さ四五寸に画く、官許傾城も、下娼及び弾妓は不用之、非官許遊女は上娼妓と雖ども不用之、京坂下娼弾妓等は、京坂坊間の女と同く、柄長け三尺五六寸許の日傘、雨傘お用ふ、或は下司夫或は婢持之て、娼妓と並び往く、大夫の傘は官物に摸する故に婢お用ひず、必ず僕夫以之て大夫の後ろに属す、
京坂祭礼の時、娼妓等、煉物と雲お催し行ふ時は、非官許と雖ども長柄傘お用し、天保府命後絶せり、江戸、今に至り祭祀の日、市間の煉児は、赤長柄傘に似たる物お用ふ、真の長柄傘に非ず、稍小形也、