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古今要覧稿
器財
雨傘(○○)
雨傘は宗五大草紙に、雨がさは雲々と見えたるより外は、ふるく雨がさといへる事聞えず、しかれども雨零者(あめふれば)、将蓋跡念有(きんとおもへる)、笠乃山(かざのやま)雲々、〈万葉集〉と見えたるなど、みな雨がさなれば、ふるくより今の製の如き画も有しものならんとは、上に載たる延喜式おはじめ、諸書にみえたるにても、おしはからるれども、雨がさといひたる事のふるくみえぬなり、また春日験記〈延慶二年高階隆兼画〉第五、俊成卿春日社参の段に、ある夜社壇にまうで侍りけるに、夜雨蕭々として社壇寂々たりければといふ詞有て図有、それにて雨がさの製作よくしられたり、今の製とかはりたる所もみえず、たゞ骨にかゞりなく、はじきがねおさしとほして有、〈按に今も此製のかさ有とぞ〉柄も殊の外ながくみえたり、