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諸国咄

傘の御託宣 慈悲の段
慈悲の世の中とて、諸人のために好き事おして置くは、紀州掛作の観音の貸傘(○○)二十本なり、昔より或人寄進して、毎年張替とて此時まで掛置くなり、如何なる人も此辺にて雨雪の降懸れば、断りなしにさして帰り、日和(ひより)の時律義に返して、一本にても足らぬといふ事無し、