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宗五大草紙

からかさの事
一笠袋のこしらへやう、総の長さは笠によるべし、上のぬひ残す分一尺弐寸、装束革の長さ同前、〈革の先おけんさきに切べし、ぬひ残たる所に可付、〉布は笠によりて、三布又二の半にも有べし、ちとさきほそかるべし、装束革は菖蒲革ごめん成べし、重ねやう菖蒲がは上、ごめん下なるべし、革一たけお二に折て、あなおあなたこなたへあけてとおすべし、鞠の取革のごとし、弓袋の装束と同前、菖蒲なければ黒革もくるしからず、但略儀なり、又下の縫残す分、是も一尺弐寸といへども、それはみじかし、一尺五六寸程にすべし、袋の一方の下お折かへして縫なり、是は自然公方家には沓お被入、武家にはじやうり足半お可入ため也、袋の一のは下おきり、二のは上へ折返して縫べし、返したる布のはしお一尺計縫あはする也、大かた絵図にあらはす、縫やうふせぬひなり、左へふすべし、
公方様、公家、法中は白くこのりお付べし、武家に御晴の時は同前、常に浅黄に染て可用、装束は同じ、猶口伝有、又人の内衆は、笠お袋に入候はでもたせられたるがよしと、故人は申され候し、笠持は人夫成べし、公方様のは人夫十徳おきて、帯おして持たるやうに覚え候、常にはたゞ人夫持候、馬に乗候時は、くらおほひおかけてもたせ候、又公家など御晴の時は、人夫にてえぼしに白きひたゝれお著て候、