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続世継
六/絵合の歌
宗俊の大納言、御母は宇治大納言隆国のむすめ也、管絃の道すぐれておはしましける、時光といふ笙の笛吹にならひ給けるに、大食調の入調おいま〳〵とて、年へて教へ申さざりける程に、あめ限りなく降て、くらやみしげかりける夜出来て、今宵かの物おしへ奉らんと申ければ、よろこびてとくとの給けるお、殿のうちにてはおのづから聞人も侍らん、大極殿へ渡らせ給へと雲ければ、更に牛など取よせておはしけるに、御ともには人侍らで有なん、時光一人とて、みのかさきてなん有ける、大極殿におはしたるに、猶おぼつかなく侍りとて、つぎまつ取てさらに火ともしてみければ、柱にみのきたる者の立添たる有けり、かれは誰ぞと問ければ、武能と名のりければ、さればとて其夜はおしへ申さで、帰りにけりと申人も有き、