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宝物集

物の心有人計り目お覚しつヽ、世中の事どもこしかた又行末まで申いで侍程に、余りに物お雲はやりて、抑人の身に何が第一の宝にて有ける、宝に何が第一にて有らんと聞居たる程に、傍より指出で、人の身には隠蓑(○○)卜雲物こそ能宝にて有べけれ、食物表物ほしきと思はヾ、心に任せて取てんず、人の隠て雲はん事おもきヽ、又床しからん人の隠んおも見てんず、されば是程の宝やは有べきと雲ければ、又そばなる物の闇りより雲様、物お願はんには、争か人の物お取んとは申すべき、〈○中略〉されば人の宝には打出の小槌と雲物こそ能宝にて侍りけれ〈○中略〉と雲に、又人そばより指出て雲様は、〈○中略〉昔より隠蓑打出の小槌お持たると雲人も実(まこと)はなし、隠蓑の少将と申す物語も、有増敷事お作て侍るとこそ承はれ、されば宝には何よりも金と雲者には不勝と雲めり、〈○下略〉