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守貞漫稿
十四/男服
合羽〈○中略〉
襟黒らしや、らせいた、とろめん、八丈等種々、色黒お専とすれども、紺もあり、茶もあり、今は江戸黒八丈絹お専とし、或は革色木綿も専用す、合羽装束は比日麁なるお流布とするに似たり、
長合羽半合羽ともに、武家用には黒或は萌木羅紗等あり、市民にも希に用之、紺もあり、其他色の羅紗製は希也、
木綿には黒、紺、縹、浅葱、御納戸、茶、鉄、納戸茶、革色等お専とし、或は澀染のかきつと雲もあり、常の木綿おも用ひ、又真岡木綿お良とす、〈○中略〉又男子に希に女用の如き無装束下のみ装束紐お付たるお用ふもあり、又大坂の両替屋の手代、雨中には襟衽ともに全く衣服と同く、浅木織毛木綿に黒さや掛半えりして、衣服とともに著して、此上に帯する也、〈○中略〉
装束の事 元文頃より、男女ともに、牛角、鹿角、水牛角の具お用ふ、 正徳頃は真鍮或は黒目銅お用ふ、其後お詳かにせず、今世亦水牛角製お専とす、
天保以前、三都とも、装束糸渦お専とし、又下の装束前図の如く長紐多し、京坂今も用之、江戸にも往々無之は非れども、左図〈○図略〉お流布とす、〈○下略〉