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貞丈雑記
五/装束
一行縢にやたらびやうしとて、鞍のあたる所へ別の革お付る物也といふ人あり、やたらびやうしといふ事、旧記に見えず、それに似たる事もなし、いぶかし、此説用がたし、又行縢おはきて、貴人は両方の腰にあげまき下ると雲説あり、此事も旧記に見えず用がたし、
一はかま行縢と雲は、神事行縢の事也、神事の時、犬追物、笠懸、やぶさめなど射る時にはく行縢は、むかばきのすそ白毛のかどお、すぢかひに切てはくお雲也、笠懸聞書射手具足秘伝の書に見えたり、〈○中略〉
一熊の皮の行縢は、弾正の官の人ならでは不用之、虎豹の皮は公方様、又は三職の衆ならでは用給はぬ也、〈射手具足秘伝に委し〉