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嬉遊笑覧
二上/服飾
今猿楽狂言に、袴お高くくゝり、脚半おはきたる体あり、もゝはき(○○○○)は股にはくなり、〈はくはもと帯ることなれども、転りては著ることおもはくといふ、足袋はくなど是なり、〉股まで入るはゞきとするはいかゞ、もゝはきお股ぬき(○○○)ともいふにや、東鑑、寿永元年六月七日の条にいふ、以股解沓差八尺串雲々、宇治拾遺、〈九〉常まさが郎等仏供養の条に、太刀はき、もゝぬきはきて出きたり〈こゝにもはくといへり〉とあり、されどもゝはきは、今の半股引の如く思はれ、もゝぬきは股解沓と同じかるべければ、もゝはきとは異なるべし、思ふに信貴山縁起の絵に、熊の皮にて作りたる沓の、膝ぶしの下までかゝる物見えたり、和名抄に、深頭履とあるものならむ、もゝぬきとは、股まで入るやうの物にや、〈○下略〉