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有徳院殿御実紀附錄

土屋相摸守政直は、常憲院殿の御時より、宿老にのぼち、四代の間仕へ奉り、恪勤の労おこたらざりしかば、公〈○徳川吉宗〉御位につかせ玉ひしはじめ、おまへにめされ、〈○中略〉いま年老たれば、殿中にて杖つくことお許すべし、また寒き折はこれおも著すべしと、ねもごろに仰ありて、御みづから紫縮緬の頭巾に、鳩の杖(○○○)おそへて玉ひける、東照宮駿府におはしけるころ、本多佐渡守正信に、巾杖(○○)おゆるされしこと、世に伝へたれど、その後は聞も及ばぬことなりとぞ、