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茅窻漫錄

烟草
最初は幾世流(きせる)とて、小き竹の節お留め、火皿の大さに作り、筆の軸に似たる物お横につけ、其烟お吸ひしなり、〈○中略〉其後黄銅の幾世流出来たる時も、自身には所持せず、家々にこしらへおき、人の来る時取り出し、請取渡の礼あり、年々流行するに随ひ、次第に増長し、今は其法の廃るのみか、勿体なき白銀黄銅の国貨お以て烟器お作り、或は錦繡、綾羅、斑毛、皮革の文物お以て草具お製し、其弊年々いふばかりなし、〈○中略〉金、銀、銅、鉄は勿論、錦繡、綾羅、斑毛、皮革の類、国家の貨物お消爍する事広大なり、