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雅遊漫錄

靉靆
提学副使潮陽林公、有二物如大銭、形質薄而透明、如硝子石如瑠璃石、如雲母、毎看文章、目力昏巻、不弁細書、以此掩目、精神不散、筆画倍明、中用綾絹聯之、縛于脳後、人皆不識、挙似問余、余曰、此靉靆也、出子西域満刺国、或聞公得南海賈胡、必是無疑矣、後見張公方洲雑錄、与此正同、雲見宣廟賜胡宗伯物即此、以金相輪廓而衍之為柄紐、制其未分則為一、岐則為二、如市四中等子匣、又孫参政景章、亦有一具、雲以良馬易得于西域、似聞其名為僾逮、則其二字之訛也、蓋靉靆乃軽雲貌、如軽雲之籠日月ね掩其明也、若作暖〓亦可、
右慎懋官花夷珍玩続考に見へたり、眼目昏巻の人老人など、書お読に重宝の器なり、若年の人もこれおかくれば、眼力お養助て、老後目力つよしと雲、舶来のもの、此土にて製するもの世に多し、おの〳〵硝子にて作る、よきものは水晶にて作る、或人水晶の眼鏡おかけ、書お読てありしが、天の陰陽お試んとて、窻おひらき天お見る、日光水晶にうつりて、たちまち両眼盲となりしとや、慎べし、今並記して世に知らしむ、恐るべし、
硝子より水晶目お助養によしと雲、其是非未試、くもりお拭には、やはらかなる絹お用ゆべし、灯心などはあしゝ、但し硝子と水晶と見わけがたきは、舌にてねぶり見るべし、其冷〈なる〉かた水晶也、別て夜学に用ひて、灯煙目にいらずしてよし、