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〈木曾街道〉続膝栗毛三編下
〈おせう〉えヽ埒もないひよんだくれなことしたわい、〈おやぢ〉なんでじやいな、おぜうその吹筒の酒うつかりと呑よつたが、あヽ胸がむかつく〳〵、〈弥次〉なせでござります、〈おせう〉はてそれは公家衆の小便しよるとものじや、〈みな〳〵〉〈おせうやあ〳〵〳〵〳〵そうた〉い禁裏の御葬送などの節、堂上方がみなもたせらるゝ完筒(くわんづゝ)といふものは、それじやわいな、あなたがたが急に手水にゆきたくならせられた時、それへなさるゝものじや、江戸でも青竹お火吹竹ほどにきつて、大名衆のもたせらるゝ事がある、やはり江戸でも完筒といふて、小便なさるゝものじやわいな、〈北八〉えヽそんなら此吹筒、もとは公家衆の小便担(たご)かへ、さあ〳〵大変〳〵、〈○下略〉