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今昔物語
十九
亀報山陰中納言恩語第廿九
今昔、延喜の天皇の御代に、中納言藤原の山陰と雲ふ人有けり、数の子有ける中に、一人の男子有けり、〈○中略〉偏へに継母に打ち預てなむ養ひける、而る間中納言大宰の帥に成て、鎮西に下ける、〈○中略〉鐘の御崎と雲ふ所お過る程に、継母此の児お抱て、尿お遣る様にて、取りたる様にて、海に落し入れつ、〈○中略〉帥の雲く、此れが死たらむ骸也とも求めて、取上て来れと雲ふ、若干の眷属に、浮船(○○)に乗せて追ひ遣る、