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太平記

先帝船上臨幸事
同じ追風に、帆懸たる船十艘計、出雲伯耆お指て馳来れり、〈○中略〉隠岐判官清高、主上〈○後醍醐〉お追奉る船にてぞ有ける、船頭是お見て、角ては協候まじ、是に御隠れ候へと申て、主上と忠顕朝臣とお、船底にやどし進せて、其上にあひ物とて、乾たる魚の入たる俵お取積て、水、手梶取、其上に立双て櫓おぞ押たりける、