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古事記伝

鳥之石楠船神、鳥とは行ことの疾きおかたどりて雲と、口決には雲、師は水鳥の浮るさまによそへて雲と雲れき、此は何かよけむ、書紀に天鳩船と雲あり、又其の釈に、播磨国風土記お引て雲るは、仁徳天皇の御世に、いと大なる楠ありしお伐て船に造りしに、其船飛が如迅し、故に速鳥と号つとあり、是らに依ば、口決の意なるべし、又万葉十六〈二十五丁〉に、奥鳥(おきつとり)、鴨雲船之(かもちふふねの)、と〈から書にも鳧舟といふあり〉あるお思へば、師説も捨がたし、石楠とは、〈○中略〉此木はいと堅くて、磐にもなる物なれば、石楠とは雲るなり、