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紫の一本

船東国丸 浅草橋の船なり、大船のはじめなり、
山一丸 日本橋の船なり、東国丸より後に造る、東国丸より大きなる屋形お八間にしきりし故、
山一丸と雲ふ、
熊一丸 江戸橋の船なり、屋形お九間にしきりし故に、熊一丸と雲、
神田一丸 神田一丸、是は神田にて一番の大船なり、〈○中略〉
川武丸 大屋形船なり、さりながら、此船程のは、いくらもあるゆへ、余はこと多さに略之、窮屈丸 此船は、かし船にはあらず、或人の手船なり、或は自薬丸と名付て、小き船なれども、自らは楽しむと雲ふ、或は易安丸などゝ名付て、せばき船なれども、膝お入るゝに楽しみありといふ心お以て名付る、此作の同類のみなる中に、窮屈丸と名付けしは、替りたる心なれば、是お記す、