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甲子夜話
三十
西帰に木曾お経しが、かけはしの下の流急にして、脹る水が白お曳けり、其流に樵夫、あなたの山に渡る小舟あり、其形いかだの如く、やうやく一二人お容るべし、名おから(○○)といふ、予〈○松浦清〉思へらく、からは甲なり、木実の甲、亀の甲、人の甲冑〈○註略〉など、皆是なり、此舟お甲と雲も、おのづから古言とぞ聞へし、