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和漢船用集
十/船処名
廬(やかた) 屋形同、釈名雲、舟上屋謂之廬、言象廬舎也、字彙曰、舟上の屋お廬と雲、重屋お飛廬と雲、又其上に在お雀室と雲、言は中候望こと雀之驚視がごとしと見へたり、漢には五層楼、本邦三重の者、廬は下屋形(○○○)、飛廬は上屋形(○○○)、雀室は日覆屋形(○○○○)也、平家物語に、三つ棟作りたる舟といへるは、今川舟の将几、上段、次之間の三棟なるべし、舳は総屋ぐら也、舫屋、船庁、並にふなやかたと読せり、貫之土佐日記にも、ふなやかたといへり、屋形の小名(○○○○○)、土台柱、台輪、桁、梁、矢倉、根太、同板、耳板、高欄、鋪居、鴨居、中鋪居、寄鋪居、方立、長押、組天井、床、違棚、刀箱、蹴込、襖障子、数子戸(まいらど)、遣戸等也、
川御座船は、橡葺やねにて、右之外に所名多し、棟、垂、萱負、裏側、箱棟、破風、品板、鬼板、掛魚、鷹羽、唐破風作、むくり破風、勾這やね等有り、昔は海御座船にも此制有、川舟屋形間の名、将几、上段、次之間、舳楼也、屋形の左右、取置の柱お立、やねお付る、是お旅やねと雲、旅雨戸とも雲、表水押へ出るお、出しやねと雲、此下に有座お小将几と雲、船頭の居処也、舳矢倉の外へ出すお見送りと雲、舳の出しやね也、上に有屋お太鼓矢倉といふ、