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続視聴草
五集九
墨水遊覧記
二日〈○天保十四年九月〉の朝とく、伝奏の館に、人々つどひて、御出たちお待ほど、空いとくらし、雨気ならんと、あやぶみ思ふに、やゝ明はてゝ、雲間の日影ほのめき出る比、両卿〈○徳大寺実堅、日野資愛、〉輿よせて出給ふ、大城のうちなる滝落る辺の汀に艤してまちまうけせり、各こゝにありて見え奉る、名だいめんめきて、高家の人々執申さる、御船は麒麟まろ(○○○○)となづけられたるに、こゝおしも竜の口と聞ゆるも、その名おのづから相あふこゝちするに、ふねやかたに鳳凰おさへえりつけたる、又つき〴〵し、