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武家名目抄
職名二十五
楫取 水手
按楫取は、船中にて楫とるわざおつかさどるものなり、楫取、又挟秒ともかけり、かんどりといへるとなへは、かぢとりの転語なり、古く楫取浦とかきて、かどりの浦とよめり、水手は櫓棹おとり、又船中の事は何事にかぎらず、とりあつかふものなり、水手、或は水主ともかけれど、国史にはなべて水手に作れり、これおかこといへるは、楫子の意なるべし、さて水手といへば楫取おもこめて、おほよそにとなへしごとく聞ゆるかたもあれど、かならず両名の分ちはある事なり、〈永承三年高野御参詣記に、梶取四人、水手十人とあり、○中略〉又船子といふ称あれど、これは楫取水手のたぐひおよべるにて、別にさる種族あるにはあらず、