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皇都午睡
三編上
江戸町うら川岸端に、船宿とて、大坂の茶船やの如きいと多く、浜側より半町計りも内町にも有り、前にいふ茶屋とおなじく、床几腰かけ出し、家号の行灯、墨黒に書き、棚に煙草盆火縄箱おならべ、客きてどこ迄といへば、言下にさあお出成されと、船宿女房、或は娘など、煙草盆に火お入れ、船迄案内する、船頭直に船お出す、さやうなら御機嫌よくと見送る、其手都合よきこと感心なるものなり、