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守貞漫稿
五/生業
江戸船宿
堀江町、柳橋辺、日本橋、江戸橋、山谷川岸、各十余戸、或は二十余戸、軒お比する者多し、其他諸川岸に散在する者、其数挙て知るべからず、皆川船宿にて、荷船宿もあれども、十け一にて其九は川遊船お専とし、各小戸なれども、晒掃お精く、屋造り奇麗お専とし、男女の密会おなし、或は客の求に応じ、宴席お兼ね、又青楼娼家に引手と号け、導くことおなす、深川等の遊里盛なる時は、其遊客遊女お乗するにより、甚繁多なりしが、遊里廃止の後甚だ衰へたり、又遊参のみにも非ず、当所は地広く特に人心活達するが故に、市中といへども、遠路に往くには舟駕お用ふること屡也、雨中の他行等にはいよ〳〵多し、