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住吉物語
尼君などつれて、河じりおすぐれば、おかしうも行きちがふ船にのりたるものどもの、あやしき声々して、つまも定めぬ岸のひめ松と歌ひて、こぎ行も、ならはぬ心ちしてあはれなり、〈○中略〉さて住吉には、やう〳〵冬ごもれるまゝに、いとさびしさまさりてあらき風ふけば、わが身のうへに浪たちかゝる心ちしてける、おきよりこぎくる舟には、あやしき声にて、にくさびかけるなど、うたふも、さすがにおかしかりけり、