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北越雪譜
二編下
土中の舟(○○○○)
蒲原郡五泉の在一里ばかりに、下新田といふ村あり、或年此村の者ども、事ありて阿加川の岸お掘しに、土中より長さ三間ばかりの船お掘いだせり、全体少しも腐ず、形今の船に異るのみならず、金具お用ふべき処、みな鯨の髭お用ひて、寸鉄おもほどこしたる処なし、木もまた何の木なるお弁ずる者なく、おそらくは異国の船ならんといへりとそ、余下越後に遊びし時、杉田村小野佐五右衛門が家にて、かの船の木にて作りたる硯箱お見しに、木質漢産ともおもはれき、上古漂流の夷船にやあらん、
蒲原郡五泉の在一里ばかりに、下新田といふ村あり、或年此村の者ども、事ありて阿加川の岸お掘しに、土中より長さ三間ばかりの船お掘いだせり、全体少しも腐ず、形今の船に異るのみならず、金具お用ふべき処、みな鯨の髭お用ひて、寸鉄おもほどこしたる処なし、木もまた何の木なるお弁ずる者なく、おそらくは異国の船ならんといへりとそ、余下越後に遊びし時、杉田村小野佐五右衛門が家にて、かの船の木にて作りたる硯箱お見しに、木質漢産ともおもはれき、上古漂流の夷船にやあらん、