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大鏡

いにしへのいみじき事どもの侍りけんはしらず、なにがしものおぼえて後、ふしぎなりしことは、三条院の大嘗会の御禊のいだしぐるま、大宮、〈○一条后彰子〉皇太后宮〈○三条后妍子〉よりたてまつらせ給へりしぞありしや、大宮の一の車のくちのまゆ(○○)に香囊かけられて、そらだき物たかれたりしかば、二条のおほぢの、つぶとけぶりみちたりしさまこそめでたく、いまにさばかりのみものまたなしといへば、〈○下略〉