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古今著聞集
十三/哀傷
後中書王、〈○具平親王〉雑仕お最愛せさせ給ひて、土御門右大臣おば、まうけ給ける也、朝夕是お中にすへて、あいし給事限なかりけり、月のあかゝりける夜、件の雑仕おぐし給て、遍照寺へおはしましたりけるに、かの雑仕、物にとられて失せにけり、中書王、なげきかなしみ給、理にも過たり、思あまりて、日比ありつるまゝにたがへず、我御身と、失せにし人との中に、この児お置きて見給つる形お、車の物見(○○○○)の裏に絵にかきて御覧じける、さる程に、完弘の中殿の御作文に参り給て、其車お陣にたてられたりける程に、物見落たりけるお、牛飼たつるとて、あやまりて裏お面に立てけり、其後あらためらるゝ事なくて、今におほがほの車(○○○○○○)とて、かの家に乗り給へるは、此故に侍るとぞ申伝たる、