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大鏡
六/内大臣道隆
此おとゞ、〈○道隆、中略、〉御賀茂詣の日は、社頭にて、三度の御かはらけ、定まりにて参らするわざなるお、其御時には、禰宜神主も心えて、大かはらけおぞ参らせしに、三度はさらなることにて、七八度などめして、上の御社に参り給ふ路にては、やがてのけざまにしりのかたお御まくらにて、不覚におほとのごもりぬ、〈○中略〉まいりつかせ給ひて、御車かきおろしたれど、えしらせ給はず、いかにと思へど、御前どもゝえおどろかしまうさで、隻さぶらふなめるに、入道殿、〈○藤原道長〉おりさせ給へるに、さてあるべきことならねば、轅のとながら、たかやかにやゝと御扇おならしなどせさせ給へど、おどろき給はねば、〈○下略〉